インフルエンザにご注意!

さて、油断禁物の感染症が流行する時季になりつつあります。 最も流行するのは年
明けくらいからでしょうが、すでに気をつけている方がいることでしょう。 今回は
今となっては誰もが認識しているでしょうが、細かく書くことにします。 体が資本
です。 注意しましょう!

インフルエンザ予防に適した手洗い

ウイルスは空気中だけでなく、いたる所に付着しています。 知らないうちに触れて
しまい、その手で目、鼻、口を触ることにより、感染します。 薬用石鹸が殺菌効果
に優れています。 30秒くらい念入りに手洗いしましょう。

お茶でうがいすると良い?

緑茶や紅茶のカテキンには抗ウイルス作用があります。 出がらしでも効果はありま
す。 カテキンは番茶にも多く含まれています。 ない時は水や白湯でもいいですが
。 何でうがいをするかより、こまめにうがいをすることが大事です。

部屋の空気を入れ換えましょう。

時々窓を開けて空気を入れ換えましょう。室内のウイルスを外に追い出したり、乾燥
した部屋の湿度を上げることができます。

寝る時の注意点

加湿器を使って湿度を50〜60%以上に保つとウイルスの生存率が大幅に下がります。
 ぬれたタオルや洗濯物を干して湿らせてもいいでしょう。

マスクをしましょう。

マスクをするのは人にうつさないためだけでなく、自分の呼吸で湿度を保ち、咽や鼻
が乾燥するのを防ぐためです。 冬に外出する際は付けている方が予防できます。

睡眠をしっかりとりましょう。

ウイルスへの抗体を作るリンパ球の活動は寝ている間に促進されます。 しっかり休
養と睡眠をとりましょう。

風邪とインフルエンザの違いは?

風邪は大きく2つに分けられます。 一般的なものは「普通感冒」インフルエンザは
「流行性感冒」と呼ばれます。 インフルエンザが風邪と違うのは突然発症し、重症
になりやすいところです。 症状も全身に及び、高齢者や乳幼児がかかると、合併症
から死に至ることも少なくありません。

冬に風邪をひきやすいのは何故?

ウイルスは冬だけでなく、一年中空気中にありますが、高温多湿に弱く、気温が低下
し、乾燥している冬に活発に活動します。 また、空気が乾燥すると、ウイルスが舞
い上がりやすく、鼻や咽の粘膜も弱って炎症を起こしやすくなるのも一因です。

風邪はどのようにして感染するのでしょう?

主な感染経路は飛沫感染です。 1回のくしゃみで60万個もの飛沫核が空気中に放た
れます。 唾にウイルスが多数あるため、咳やくしゃみと共に多くのウイルスも飛び
ます。 そばにいて、鼻や口から吸うと、風邪がうつります。 2mくらい飛びます。
 接触感染は感染した人がくしゃみや咳を手でおさえた後、ドアノブやスイッチなど
に触れてウイルスが付着するものです。 それを健康な人が触れた後に目、鼻、口を
触ることにより、粘膜、結膜などを通して感染することがあります。

年をとると風邪をひきやすくなるのは何故?

加齢により、免疫力が下がるからです。 ウイルスが体内に入っても、リンパ球やマ
クロファージという免疫細胞が退治すれば風邪をこじらせずに済みます。 過労や睡
眠不足、ストレスなどで免疫力が下がっても風邪をひきやすくなります。 女性なら
生理前、排卵期、更年期などでも免疫力が下がるので、注意が必要です。

気が抜けると風邪をひきやすいでしょうか?

忙しさが一段落した時、週末、休みに風邪をひきやすいと言われます。 忙しい時は
緊張しているので、ホルモン分泌の影響で、免疫力が一時的に高まりますが、一息つ
くと、心身の緊張が解けて、免疫力が低下します。 風邪をひきやすくなります。

インフルエンザ脳症とはどういう状態でしょう?

子供がインフルエンザにかかった時に心配なのは急性脳症になることです。 インフ
ルエンザ脳症は6歳以下の子供に多く、死亡率は約10%です。 約25%がてんかん
脳性麻痺、手足の麻痺などの後遺症が残ります。 インフルエンザウイルスに対して
免疫反応が強すぎて、脳が腫れるなど悪影響を及ぼすとされています。 従来のイン
フルエンザは1歳前後の発症が多かったが、新型インフルエンザの脳症は比較的高い
年齢層も発症するようです。

兆候はあるのでしょうか?

急性脳症の兆候は高熱の後、痙攣、意識障害(名前を呼んでもぼんやりして答えない
)意味不明の言動などがあります。 すぐに医療機関を受診しましょう。

子供を観察することが重要。

発熱して早いうちになることが多く、短い間に病状は進行します。 子供がインフル
エンザにかかったら、普段と違う様子がないかしっかり観察しましょう。 重症の場
合は集中治療室(ICU)で過剰な免疫を抑えるなどの治療をします。

解熱剤に注意して下さい!

ボルタレンやポンタールなど一部の強い解熱剤は脳症を重症化させる要因になると言
われます。 自宅の置き薬を使わないで、必ず医師に相談して使いましょう。

漢方薬の種類と効果

漢方薬は風邪のひき始めがおすすめです。 体を温めて発汗させて風邪を治す効果が
あります。 有名な葛根湯でも、熱が上がってきてから飲んだのでは逆効果です。

1 葛根湯 体力のある人で、寒気がするなど、風邪のひき始めに効果があります。
 発汗作用によって熱を下げるので、寒さからくるタイプの風邪に向いています。 
風邪からくる頭痛、筋肉痛にも使われます。

2 麻黄附子細辛湯 冷え症で体力のない人の疲労感と寒気がある風邪の初期に用い
られます。 低血圧で頭痛があり、めまいがする時にも効果があります。 花粉症に
も用いられます。

3 小青竜湯 体力は中くらいの人で、水っぽい鼻水に効く漢方薬です。 アレルギ
ー性鼻炎や花粉症にも使われます。 葛根湯と同じく、発汗作用が大きな特徴です。

4 桂枝湯 自然に汗が出るような体力のあまりない人の風邪のひき始めに効きます
。 頭痛や発熱、寒気がし、汗が自然に出るなどの症状の人に使われます。

5 麦門冬湯 ひどい咳を鎮める漢方薬です。 たんの切れにくい咳や気管支炎にも
用いられます。

麻黄湯タミフル並みの効果あり?

2009年5月8日の読売新聞はインフルエンザに漢方薬麻黄湯タミフル並みの効果が
あるという報告を載せました。 新型インフルエンザへの効果は未確認ですが、異常
行動などへの懸念から、現在タミフルの10代への使用は原則禁止されています。 漢
方薬という選択肢の存在は大きいと関係者は話しています。

注意! 漢方薬も体質が合わないと、副作用があります。 麻黄は交感神経を興奮さ
せる作用があります。 血管収縮させ、心臓の働きを活発にするため、高血圧や狭心
症、心筋梗塞の既往のある人が服用すれば、再発作を誘発しかねません。 葛根湯、
麻黄附子細辛湯、桂枝湯にも入っています。

新型インフルエンザの治療に麻黄湯を使うと、タミフルと同じ程度の症状軽減効果が
あるという研究結果があります。 新型インフルエンザへの効果は未確認ですが、タ
ミフルの効かない耐性ウイルスも増える中、注目されました。 日本感染症学会で発
表された研究はa型インフルエンザウイルスを検出した18〜66歳の男女20人の
同意を得て実施されました。 うち8人はタミフル、12人は麻黄湯を5日間処方し
ました。 共に発症48時間以内に服用し、高熱が続く時は解熱剤を飲んでもらいま
した。 服用開始から平熱に戻るまでの平均時間はタミフルが20・0時間、麻黄湯
が21・4時間でほぼ差がありませんでした。 解熱剤の平均服用回数はタミフル
2・4回に比べ、麻黄湯は0・6回と少なくて済みました。

麻黄湯のインフルエンザへの効能は以前から承認されていて、健康保険で使えます。

インフルエンザの感染を防ぐ防法

高熱が出るとは限らない

インフルエンザの怖さはその強い感染力です。 もし感染したら、すぐ適切な処置を
受け、他の人にうつさないことが大切です。 では、一般的に自分がインフルエンザ
に感染していることをどのように判断しているのでしょうか。 38℃以上の高熱でイ
ンフルエンザを疑うという人が多いです。 ところが診断キットの普及で、インフル
エンザに感染していても高熱が出ないケースのあることが分かっています。 通常、
ウイルスに感染すると人間の体は熱を出して対抗しますが、体質や免疫力の違いで反
応には違いがあります。 特に、高齢者では感染しても高熱が出ないことが多く、そ
の結果、感染の拡大や二次感染による合併症が起きます。

日本臨床内科医会の調べによると、38度を超える高熱が出なくてもインフルエンザだ
と診断された人は成人では2割、高齢者では5割くらいだと言われます。

高熱が出なくても、インフルエンザが流行している時期であれば、ただの風邪と思わ
ずに、まず医療機関で受診して下さい。

インフルエンザはなぜ怖い?

インフルエンザウイルスは体内に入ると、突起を使って細胞に入り、細胞内で増殖を
開始します。 増殖したウイルスは細胞の外へ出ようとしますが、そのままでは細胞
の表面にある蔓のようなものが絡んで、細胞から出られません。 そこで、ウイルス
は第二の突起をはさみにしてそれを断ちきり、次の細胞へ移動しながら増殖します。
 そして、この増殖を阻止するため、体は高熱を発したり、さまざまな物質をつくり
出します。 その物質が関節痛など、インフルエンザにかかった時のつらい症状を引
き起こします。 乳児や小児、免疫機能が低下している高齢者が感染した場合、こう
した体の対抗手段が弱いので、ウイルスの増殖を阻止できないと考えられます。

インフルエンザの増殖

ウイルスは2種類の突起を持って、それぞれが鍵とはさみの役割をします。 ウイル
スは鍵を使って細胞の中に入ります。 細胞内で増殖したウイルスははさみを使って
細胞の外へ出て、細胞は壊れます。 驚異の増殖速度で体にダメージを与えます。

治療薬タミフルの働きとは?

発症後48時間以内に服用すれば、1〜2日後には発熱がおさまる治療薬がノイラミニダ
ーゼ阻害薬で、タミフルがよく知られています。 ウイルスのはさみをブロックし、
細胞の外に飛び出すのを防ぎます。 そのため、ウイルスの増殖を防ぎ、熱も下がる
が、ウイルスは死滅していないことに注意! 熱が下がったからと油断すると、他の
人にウイルスを感染することになります。 タミフルははさみの刃をブロックする薬
であって、ウイルスそのものを殺すものではありません。 また副作用など、飲み方
にはさまざまな注意が必要で、医師の処方通りに服用することが大切です。 たとえ
家族でも自分に処方された薬を残して飲ませるようなことは絶対にしないで下さい。

タミフルリレンザと異常行動との関係

薬の服用と異常行動の関連についてはまだ明確になっていませんが、薬を飲む、飲ま
ないにかかわらず、インフルエンザにかかると、一部の人には幻覚などの症状が現れ
ます。 薬を飲んでいなくても、発症から48時間くらいは注意深く観察して下さい。

解熱後のインフルエンザ残存率

1日後81%、2日後43%、3日後13%(国際インフルエンザ制御会議)

インフルエンザの感染ルートは?

インフルエンザは感染者の咳やくしゃみから感染すると考えられています。 一般的
には咳やくしゃみをした時に飛ぶ飛沫から直接うつると考えられ、それを防ぐために
マスクなどが使われます。 ところが、その飛沫はすぐに水分が蒸発して、直径が10
分の1に縮小して飛沫核となり、長い時間空気中に漂います。 しかも、その中に大
量のウイルスがいた場合、くしゃみをしてから九時間たっても、まだ空気中で浮遊す
ることが分かっています。 つまり、感染を防ぐためには感染者のくしゃみや咳を直
接受けないようにするだけでは防げません。 感染者が使った部屋を定期的に換気し
て下さい。 また、感染者はマスクをして、飛沫を飛ばさないようにして下さい。

1回のくしゃみで、空気中に放出される飛沫核の数は?

60万個と言われます。 インフルエンザにかかっている人のくしゃみの飛沫核にはウ
イルスが入っている可能性が高いです。

空気中に浮遊しているウイルスの生存個数

実験の結果、直後600万個、3時間後12万個、9時間後5000個のウイルスが生きている
ことが明らかになりました。 (国立病院機構仙台医療センター

発症率九割減の予防法

うがいや手洗いといった従来の予防法に加えて、発症率を十分の一に抑えた方法があ
ります。 その予防法は歯磨き、舌磨き、歯垢の除去などの口腔ケアです。

口の中をきれいにしておくと何故インフルエンザにかかりにくくなるのか?

鼻から咽にかけての粘膜は蛋白質の膜で覆われているため、ウイルスはなかなかくっ
つくことができません。 ところが口の中の細菌が出す「プロテアーゼ」という酵素
が膜を破壊することで、ウイルスがくっつき、細胞内に侵入できるようになると考え
られます。 プロテアーゼは、気道の上皮細胞や口腔内の細胞が作っています。 そ
こで口腔ケアで細菌を減らしたところ、唾液に含まれているプロテアーゼが減り、そ
の結果としてインフルエンザの発症を予防できたのではと考えられています。

口の中の細菌を減らす口腔ケアのやり方

基本は普通の歯磨きを丁寧にやるという感覚で良いでしょう。 ペンを握るように軽
く歯ブラシを持ち、歯ブラシの面を歯の表面に垂直に当てます。 特に歯と歯のすき
間、歯と歯肉の境目に住み着く細菌を掻き出すイメージで、力を入れすぎず、小刻み
に歯ブラシを動かして下さい。(歯間ブラシを使うのも効果的) 舌の上にも非常に
多くの細菌が付着しているので、歯ブラシを舌の表面に優しく当てがい、奥から手前
に向かって力を入れずに動かして、舌の表面を磨いて下さい。(痛い場合は歯ブラシ
をガーゼでくるむか、市販の舌ブラシを使って下さい) 最後にうがい液などで頬の
内側など、口の中全体をしっかりうがいして、細菌を洗い流します。

自宅で感染拡大を防ぐ対策のポイント

基本的には患者を隔離し、健康な人との接触を避けます。 患者がいる部屋の定期的
な換気をします。 看病役をワクチン接種した人等1人に限定し、看病する人もマス
ク、手洗いを徹底します。 熱が下がってもウイルスはまだ体内にいますので、感染
拡大を防ぐため、処方されたタミフルリレンザは熱が下がっても飲みきります。

ウイルス感染は防御機能を破壊する!

電子顕微鏡で鼻からのどにかけての粘膜を見ると、「線毛」という細かい毛がたくさ
ん生えています。 これが素早く動くことで、ウイルスや細菌などの異物を運び出し
、感染を防いでいます。 しかし、インフルエンザに感染すると、その線毛が破壊さ
れ、はがれ落ちてしまいます。 すると、様々な病原菌が感染しやすくなってしまい
ます。 インフルエンザが重症化して亡くなる方はインフルエンザそのもので亡くな
るというよりも、同時に細菌性の肺炎などに感染して亡くなる方が多いです。 ウイ
ルス感染によって破壊された線毛が回復するには時間がかかるため、インフルエンザ
が治っても、しばらくは感染症への注意が必要です。 特に高齢者の場合は、肺炎を
予防するワクチン(肺炎球菌ワクチン)も事前に接種しておく方がいいでしょう。

重症化しやすいインフルエンザ。 これから数か月は充分注意しましょう。